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2022.09.30
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【国語】算数・数学の文章題を解くのに国語の読解力が大切って本当?
実際のテスト結果から考える読解力の必要性
算数や数学の文章題を解く上では、国語の読解力が大切になる。たまに聞くことがありますよね。
でも、実際のところは一体どうなのでしょう?
それを解明する手がかりとなりそうなテストが、2020年8月に広島県の小学3・4・5年生を対象に行われました。
このテストは、生徒の数と図形に関する知識と推論の能力を測るもので、たとえば次のような問題が出題されました。
子どもが14人、1れつにならんでいます。ことねさんの前に7人います。ことねさんの後ろには、何人いますか。
(今井むつみ・楠見孝・杉村伸一郎・中石ゆうこ・永田良太・西川一二・渡部倫子『算数文章題が解けない子どもたち――ことば・思考の力と学力不振』岩波書店、2022年、36頁)
生徒は↓のような形で(式)(図)(答え)の3つを答えます。
(式)
(図)
(答え)_____________
※このほかに出題された問題等について詳しく知りたい場合は、前掲『算数文章題が解けない子どもたち――ことば・思考の力と学力不振』をご参照ください。
この問題は、小学1年生で習う内容であるにもかかわらず、3年生の正答率は28.1%、4年生の正答率は53.4%、5年生の正答率は72.3%だったそうです。
5年生でも25%以上の生徒が間違えたことになります。
どうしてこんなに間違えてしまうのか? 生徒たちの間違い方には、次のようなタイプがあったそうです。
・意味を考えずにただ問題文の数字を使って式を作っている
(=文章の意味を深く考えようとせず、14、1、7という文章中の数字をむやみに使っておかしな式を作る)
・問題文の状況を正しくイメージできていない
(=文章の内容を正しくイメージできておらず、ことねさんを含めて14人であることを理解できていなくて、間違った人数の列を図に描いてしまう)
・問題文の状況のイメージを正しく式にできていない
(=列の様子を正しくイメージして図に描くことはできているのに、作った式が間違っていて、間違っていることに自分で気づかない)
このように間違い方をつきつめていくと、算数・数学の文章題を解くために必要な力として、単純な計算力以外に
・視点変更能力(文脈に応じて自分以外の視点でものごとを捉える力)
・推論能力(持っている知識を使って、自分なりに推論を立てる力)
・メタ認知能力(自分の考えた式や答えが間違っているかどうかを見直す力)
などが大切であることがわかってきます。
これらの要素は基本的にどの教科でも大切ですが、国語でも、文章を読解するときには、登場人物の視点に立って考える視点変更能力や、文脈に沿って場面の状況や登場人物の様子などを読み取る推論能力が大事になりますよね。
実は、先ほど例に挙げた問題が出題されたテストと同時に、主にことばに関わる知識を測るテストも行われたのですが、2つのテストの結果を合わせて分析したところ、生徒の「ことばの力」(※ここでは、語彙知識と視点変更能力)と文章題を解く力は明らかに連動していたそうです。
国語の読解力が高い=「ことばの力」が高い生徒は、語彙知識があり、視点変更能力や推論能力も高いため、算数・数学の文章題を解くときも問題文に書かれている内容を正確に読み取り、正しくイメージして式を作ることができる……と考えれば、やはり国語の読解力と算数・数学の文章題を解く力には関係がある、と言うことができそうですね。
つまり、算数・数学の文章題を解く上で、確かに国語の読解力は大切だ! というわけです。
少し話は変わりますが、テストと同時に行われた聞き取り調査では、ふだん読書をする習慣がある生徒ほどテストの得点結果がよいという相関関係があったそうです。読書には、ことばを学んで語彙知識を増やす効果があり、語彙知識が広く深くなるほど、抽象的な概念を理解する助けにもなります。
国語の読解力をつけるための勉強として具体的に何をすればいいのか、というのはなかなか難しい問題ですが、すぐに取り組めることとして、読書の習慣を少しずつつけてみるなどいかがでしょうか?
文:教務課スタッフ T