今回も数学にまつわる偉人。クリストファー・ヘヴンズを紹介したいと思います（この記事を書いている時点でまだ存命です）

この人は今、アメリカのシアトル近郊にある刑務所に服役している囚人です。罪状は殺人罪。
高校の時に道を踏み外し仕事も見つからず、麻薬に手を出し最終的には殺人を犯してしまいます
2011年に懲役25年の刑を言い渡され、今もなお収監されています

彼がその名をとどろかすことになったのは、古代ギリシャの数学者ユークリッドが残した難問を解くことができた、という業績によるもの。驚きなのは、彼の数学を学んだ環境にあります。

先に書いた通り、ヘヴンズは高校を中退して刑務所に入っています。高等な数学はもちろん学んでいません。彼が数学を本格的に習い始めたのは、刑務所に入った後でした。

刑務所の中で数学の授業を受け、その奥深さにどんどんとのめりこんでいきます。やがて授業では満足できなくなり、より高いレベルの数学書を欲しいと言い始めます。

ところが、刑務官にもそんな高度な数学を教えられる人はおらず、ヘヴンズの申し出は一度却下されることになります。ヘヴンズはあきらめず交渉し、「自分が他の囚人に数学を教える見返りとして、高度な数学書と自分と対等に話ができる数学者を紹介してほしい」と要求し、実際に出版社に手紙を送ります。

出版社でこの手紙を受け取った編集者は自分の奥さんに手紙を見せるのですが、なんとこの奥さんの父親は大学の数学教授。早速連絡を入れますが……囚人が数学を本気で学ぶわけがないと、問題を一問出題してみます。

しばらくたってから、ヘヴンズから返事が届きました。そこには手書きの数式がおよそ120㎝の長さの手紙にびっしり書き込まれていたのです。
教授はコンピュータに数式を入力し計算してみると、手計算の答えとぴたり一致しました。

ここから研究の日々が始まります。教授は自分が取り組んでいる数学の問題を一緒に解かないかとヘヴンズを誘ったのです。

それからしばらくして1冊の論文が執筆されました。まさしく、難問を解いた証です



これからもヘヴンズは様々な問題に挑戦し業績を残していくでしょう。
やがて彼の物語は映画や本といった形で語り継がれていくのかもしれません……



ヘヴンズの話から学び取れることはいくつかあります。
1つ、優れた指導者との出会いによって人生は大きく変わるということ
2つ、何かを始めるのに遅いということは決してないこと
今、この瞬間を大事に過ごしていきましょう！